第三回春日忌俳句大会(大高翔選) 結果
特選三句
◯泣きべそにちちんぷいぷい春日の忌
平間槐 東京都
「泣きべそにちちんぷいぷい」が、現代の景であり、家光公のエピソードとも重なる。季語としての「春日の忌」がうまく働いている一句。
※春日局が、泣き虫だった幼い家光を鼓舞する際に用いた「智仁武勇」 (「智」は思考力、「仁」は思いやりや優しさ、「武」は行動力、「勇」は誠実、正直などの意味。この四字を「一生の宝」として育てた)は縁起の良い言葉として庶民に伝わり、やがて「ちちんぷいぷい」に変化したという。
◯秋晴の境内に満つ縁の市
鈴木はる美 東京都北区
「秋晴の境内」に明るさが満ちている。良い「縁」が集い、つながって広がっていく時間が見えてくる。和やかな「市」の賑わいが感じられる。
◯秋惜しむ江戸城絵巻春日の忌
松井秋尚 東京都多摩市
「秋惜しむ」によって「江戸城絵巻」に臨場感が生まれる。「春日の忌」がさらなる臨場感を高め、江戸を身近に感じさせる。
〇佳作七句
金風や春日の像の打掛へ
田中かんな 東京都中野区
「金風」がふさわしい季語で、「春日の像」がより堂々と感じられた。「打掛」の広がりまで描写した観察眼がすばらしい。
◯春日忌や人待ち顔の投句箱
西浦風 神奈川県横浜市
「春日忌」当日の、本俳句大会の様子を一句とした目の付けどころがとても新鮮。「人待ち顔の投句箱」とはなんとも楽しい表現だ。
◯街道をゆらりゆられて春日の忌
尾原遊歩 愛知県田原市
「街道をゆらりゆられて」から、「春日の忌」にたどり着くまでも楽しんでいる作者が見えてくる。江戸の人の移動にも思いを馳せているのかもしれない。
◯天高く偉業を偲ぶ春日の忌
永吉烏兎 東京都港区
「天高く」が「偉業」にもかかり、「春日の忌」に参加する作者の思いが感じられる。
◯春日の忌ときをり覗く墓の窓
千田遙己 千葉県
「墓の窓」がおもしろい表現で、「春日の忌」ならではの一句。「ときをり覗く」に作者の想像力の豊かさがある。
◯鼻先の秋を探るや柴のちよ
東條真紅 千葉県
「鼻先の秋を探る」に詩情とユーモア、愛らしさがある。「ちよ」への、あたたかなまなざしが感じられる挨拶句となった。
◯春日忌の屋台の隅に系図あり
矢野淳子 千葉県市川市
「春日忌」当日の情景が、的確に描写された。「系図あり」によって、特別な場所、特別な催しであることがやわらかくも確かに伝わる。
===※【入選作品番号一覧】
特選
◎16秋惜しむ江戸城絵巻春日の忌
松井秋尚 東京都多摩市
◎34 泣きべそにちちんぷいぷい春日の忌
平間槐 東京都
◎36秋晴の境内に満つ縁の市
鈴木はる美 東京都北区
◯入選七句
8街道をゆらりゆられて春日の忌
尾原遊歩 愛知県田原市
26 天高く偉業を偲ぶ春日の忌
永吉烏兎 東京都港区
29 春日の忌ときをり覗く墓の窓
千田遙己 千葉県
32鼻先の秋を探るや柴のちよ
東條真紅 千葉県
39金風や春日の像の打掛へ
田中かんな 東京都中野区
44 春日忌や人待ち顔の投句箱
西浦風 神奈川県横浜市
53 春日忌の屋台の隅に系図あり
矢野淳子 千葉県市川市